オールドタイム、ブルーグラス、カントリーで使われる花形楽器のフィドル。楽器としてはバイオリンと同じものが用いられますが、その音を聞いた印象はずいぶん違います。このフィドルについて、少し、書いてみました。

チューニング

　フィドルは楽器としてはバイオリンと同じものなので、多くの場合はバイオリンと同じチューニングが用いられます。しかしながら、オールドタイムでは、楽曲に合わせてチューニングを変えている例が多々あります。
これらのチューニングを資料から拾ってまとめてみました。

　基にした書籍は、「The Fiddle Book」 by Marion Thede。ここから拾った曲で分類しています。また、参考のために、「Master of Old-Time Fiddling」と「Fiddler's Fakebook」に、標準チューニング以外であげられているものを右の欄に書き出してあります。
　「The Fiddle Book」の割合では、６割強が標準チューニングとなっています。

各チューニングについて簡単にまとめます。

EAEA

３／４弦を１音上げたチューニング。１／２弦と３／４弦がオクターブ違い。KeyがＡの曲が弾きやすい。１／２弦と同じフィンガリングで３／４弦が弾ける。３／４弦はドローンとしても使用できる。
標準チューニングの次に使用頻度が高い。
１／２弦を一音下げたDGDGは、一音下がっただけでAEAEと同じチューニング（Key G）。

EADA

４弦を１音上げたチューニング。KeyがＤの曲で使用する。３／４弦がＤ／Ａとなり、ドローンとして使用できる。

C#AEA

EAEAチューニングの１弦をC#に下げたチューニング。Key＝Ａで使用する。オープンコードがＡとなるので音が厚くなる。メロディが高音へいかない場合に使われるようだ。ブルーグラスでは Black Moutain Rag を弾くときに使われる。

DADG

１弦を１音下げたチューニング。KeyがＤの曲で使用する。１弦がドローン的に使用できる。

DADD

１弦を１音下げ、４弦は３弦のオクターブ下に。Key Ｄ。４弦が低音で鳴り響くバグパイプのような効果を狙ったチューニング。

EAEE

３弦を１音上げ、４弦はそのオクターブ下に。DADDチューニングを全音上げたもの。Key E。

EBEB

２弦を１音上げてＢに。３／４弦は１／２弦のオクターブ下に。Key Eのオープンチューニング。用例が少ない。

EBEE

EBEBチューニングの４弦を３弦のオクターブ下のＥにして低音ドローンに使用する。Key　Ｅ。

C#F#EA

C#AEAチューニングから２弦をF#まで下げたもの。Key Ａで使用。この１曲の例のみ？

CADG

１弦をＣまで下げたチューニング。Key Ａ。Black Mountain Ragをこのチューニングで弾くこともあるらしい。おそらく、この曲の特徴のC->C#のスラーのために１弦をあえてＣにしたと思われる。

EADD

４弦を３弦のオクターブ下に合わせる。Key Dでの低音のドローンとして４弦を使用する。

EADE

４弦を３弦の７度下のＥに合わせる。Key　Eでの低音のドローンとして４弦を使用する。